近年、古代エジプトで続々と“新たなミイラ”が発見されている。つい最近も、エジプト中部の地下墓地内でミイラ17体が発見された。考えてみれば、エジプト王朝というのは葯3000年間もの長い間続いた王朝である。その間、亡くなった王侯貴族の数は相当数に上る。新たなミイラが続々と発見されたからと言って本当は驚くことでもないのだ。彼らは「死後世界」を信じ切っていた。だから、ミイラを作成し続けた。エジプトというのは雨が降らない。ミイラは“湿気”を嫌う。極端な話、エジプトでは砂の下に墓地を作って埋めて置けば、黙っていてもミイラ化される。そういう乾燥地帯なのだ。丁度、アルプスの山峰が冷凍庫状態で、黙っていても遺体が“冷凍保存される”のと同様である。ただ古代エジプトでは、より丁重に神官の手で“ミイラづくり”を行った。それは、死後世界で“蘇るための肉体”をつくるためだった。腐敗した肉体では蘇れない。そのために肉体から臓器を取り出し、それは別な壺に入れて保管する。ミイラが完成すると「口開きの儀式」と呼ばれるものを行う。まあ、言ってみれば呪術である。“蘇りのための呪術”。もう一つ必要なものが「カー神像」である。これは“本人と等身大の彫像”で、ここに「カー」が宿っている。この「カー」というのは“分身”とも“死後生命”とも“肉体を支えるもの”とも“霊体”とも訳される。とにかく、そういうたぐいのものだ。これが備わって初めて、死後の世界で蘇ることが出来る。実際、古代エジプトの著名な王たちは、現在でもカイロ博物館の「ミイラ展示室」内において、ミイラとして復活している。毎日、何百人もの人々が、ラムセス2世をはじめとした歴代の王たちに、ご対面している。奇妙にも、彼らは蘇り、王の威厳をミイラという形で表現している。もっとも、そばにあったはずの「カー神像」はない。もし、それを置いて、本当に蘇ってしまったなら、だれも責任を取れない…からなのであろうか。
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