或る雑誌が女優・沢尻エリカ主演のドラマ「母になる」を取り上げ、それと同時に、今から十年前の「別に…」発言と、そのバッシング報道の在り方を書いていた。確かに、あの頃「エリカ様」は一躍有名になったのだ。女優が、舞台挨拶の“ちょっとした発言”一つで、これほど有名になった例は記憶にない。それだけ良くも悪くも「別に…」はインパクトがあったのだ。その結果として、この女優には何故か“ダーティー”なイメージが付き、表舞台からしばらくの間消された。今回は主演ドラマだが、残念ながら彼女のイメージとは合わない。その結果、彼女の持っている“普通”の部分だけが際立ち、つまらない作品となっている。そう、この人にはせっかく“悪女”的なイメージがあるのに、それを全く活かせていない。大体、母親役そのものが似合わない。本人も、経験のない役どころで戸惑っているかのようである。ましてや、“平凡な主婦”という役どころが何とも不似合いなのだ。自分の子供が誰かに連れ去られて、記憶をなくした後で再会する設定なのだが、そうであれば“空白の歳月”の苦悩が滲み出ていなければならない。それがまるでないのだ。子役として出ている少年も、まったく翳りがなく、より作品を“嘘っぽく”感じさせる。だからドラマの中に入っていけない。むしろ、あの「沢尻エリカ」はどこに行ってしまったんだろう、という想いだけが霧のように立ち込める。これは本人の志向なのだろうか。それとも所属する会社としての方針なのだろうか。“普通の主婦”というイメージの方が売り込みやすいからだろうか。日本には“悪女”を演じられる女性がほとんどいない。だから、悪女が出て来るような“大人の作品”は、総じてつまらないドラマになってしまうケースが多い。この女優は、そういう意味で最高のイメージを与えられていたのに、つまらない“普通の主婦”となって、すべてを失ってしまった。
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