時々、なぜそういう現象が起こるのだろうと不思議に思うことがある。29日に墜落したLCCライオン航空JT610便に搭乗予定だった人物がいるからだ。ソニー・セティアワン氏はインドネシアの財務省の職員で、毎週のようにその時刻の便に搭乗していた。その日も、いつもと同じ時間帯で家を出たのだが、交通渋滞で大幅に空港への到着が遅れて、その便には間に合わなかった。その結果、189人全員が絶望とされているJT610便の次の便へと切り替えざるを得なかった。つまり、遅れてしまったために“命拾い”をしたのだ。時々こういう話を聞く。この人の場合、いつもと同じ時間帯で家を出ている。そういう点では、何らの“引き止め”もなかった。ジャカルタの交通渋滞に巻き込まれたのだが、本人も、何故あの時だけあんなに渋滞したのかわからないといっている。問題はここである。その人、一人の命を救うためだけに渋滞は起こったのだろうか。そんなはずはない。ジャカルタではいつも起こっている。たまたま、その日だけ特別渋滞が異常に長かった。もしも、彼が予定通り行かないことに焦って別の道路を選択したならどうなったのだろう。もしかすると、ここに“運命の分かれ道”があるのかもしれない。彼は、いつもの時間に家を出て、いつもの道路を走った。本来なら余裕で間に合うはずなのに、このままでは“いつもの便”に乗り遅れてしまう。それでも彼は焦らず、仕方がないと割り切って次の便を選んだ。人生には、時々、予定外のことが起こって計画通り、予定通りに行かないことが起こる。その時、どうしても本来の計画通り、予定通りに進めようとするか、それとも、それはそれで“運命”として受け入れるか、瞬時の判断や決断を必要とするときがある。結局、アクシデントを“運命”として受け入れた方が、“最終的な幸運”を手に入れるケースが多いような気が私にはするのだ。それにしても「安い」という言葉には「危険」という言葉がついてまわっていることを、今回の格安航空の事故は教えようとしている。
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