私がとても興味深く感じている文字がある。「教える」という文字だ。実は、このことに気付いたのは十年以上も前になる。古代エジプトでは、ご存知のように「ヒエログリフ(聖刻文字)」という文字から王朝文明がスタートした。古代中国・殷(商)王朝では「甲骨文字」という原初漢字文字から王朝文明がスタートした。この東西の古代文明圏で発明された「教える」という文字には共通性があったのだ。それは両方ともに“子供に鞭をふるう形”として「教える」の文字が成立していることだ。つまり両文明とも、王朝の子孫たちには文字通り“力ずくで”知識を教え込んでいた、ということである。それは同時に、将来の王朝を担う子供たちに知識を教えるということが、鞭を使ってでも憶え込ませる必要性があったことを、われわれに気付かせてくれている。そう、幼い子供たちには文字通り“知識を叩き込ませる”ことも必要なのだ。ところが、最近は“逆現象”が起きてしまっている。茨城県の中学校で、女子中学生が教職員二人を殴って傷害容疑で逮捕された。全治二週間の怪我を負わせた児童は男子中学生ではなく、女子中学生であった。しかも、暴力を振るわれた一人は30歳の男性講師である。この“構図”をどう見れば良いのか。一番の理由は、子供たちが“学ぶ立場”から“お客様の立場”へと変貌していることである。つまり、外野であるはずの“父兄たち”がうるさすぎて、実際のところ“知識を叩き込ませる”ことなど出来なくなっている、ということだ。たとえ児童から“ムチ”を振るわれても、教師の側からは“ムチ”を振るうな、と指導させている。つまり完全に教師から“ムチ”が奪われているのだ。これは古代文明が指摘している「教育」の在り方ではない。幼い子供たちには“ムチ”を持って指導するのが何千年も繁栄が続いた王朝の“教師の在り方”なのだ。
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