独特の語りで知られた永六輔氏が亡くなった。昭和60年代に大ヒットした「上を向いて歩こう」や「今日は赤ちゃん」などの作詞家としても知られる。「上を向いて歩こう」の歌詞は「上を向いて歩こう 涙がこぼれないように歩く 一人ぽっちの夜」という歌詞なのだが、よくよく考えてみると、この歌詞はおかしい。一人ぽっちで涙がこぼれないように歩くためには、ほとんど真上を見て歩かなければならない。そうすると極めて危険だ。まあ、そういう“気持ち”だと解釈してあげよう。実際、今の日本も内閣府の調査で「生活が苦しい」という人達が60%の世帯だという、なんとも哀しい結果が公表された。同じ調査で「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」合わせても3.7%の世帯だというから驚く。“日本って貧しいんだ”とあらためて思うではないか。ところで「上を向いて歩こう」は全米でも大ヒットしたことで知られる。但し「スキヤキ」という奇妙なタイトルで…なのだ。作詞家には事前にタイトル名称の変更は知らされていたのであろうか。おそらく知らされていなかったことだろう。作詞家に「『上を向いて歩こう』を『スキヤキ』に変えても良いですか?」と聞く勇気は、私が関係者なら、ない。そんなこと、とてもじゃないけど訊けない。作詞家は当然ながら“言葉に敏感な職業”である。涙がこぼれないように歩こうとする人物なのだ。それに対して「スキヤキを食べて忘れましょうよ」なんて言えるか。なお、永六輔自身は、この歌詞は「安保闘争で敗れた時の悔しさ」を作詞したものだと後に語ったという。今回の参院選も自民党が大勝した。彼は「涙がこぼれないように」永遠に瞼を閉じたのかもしれない。
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