世の中には、誰も悪くないのに“不幸”が忍び寄って来ることがある。女優の藤真利子さんは、10年間の自宅介護生活を経て2016年11月に母親・藤原静枝さんを亡くした。4歳の時に人気作家だった父親・藤原審爾氏の元を母親と二人で飛び出し、私がママを守る、と幼心に誓って以降の二人暮らしだったようだ。その後、彼女は大学生の時に女優デビューし、数々の賞を受賞、独身のまま仕事を続けていたが、母親の脳梗塞と共に“介護生活”主体に切り替え、約十年の介護生活ののちに見送る形となった。母一人、子一人の家庭の場合にありがちな情景である。彼女には、自分が仕事に行っていなければ…自分が仕事からすぐ戻っていれば…という“後悔の念”がずっとついてまわったようである。そのため、介護の経緯などを詳細に記した『ママを殺した』(藤真利子著・幻冬舎刊)は、憑かれたように一気に書き上げ、昨年11月に出版された。けれども、その後も「死なせてしまった」という自責の念は無くならないらしい。その執念のような思いは、未だに親の介護をしている人たちに対して「うらやましい」と涙を流す態度からも読み取れる。だが、これは彼女一人の想いではないのかもしれない。全国には、無数の“介護する側”と“介護される側”の人達がいる。もちろん、誰も悪くはない。けれども、こと“介護”に関しては、さまざまな“感情”や“思惑”が行き交う。何が正しくて、何が間違っているか、誰にも本当は言えない。特に“自宅介護”は大変である。そのこと自体は立派でも、果たして本当にその方が良いのかは疑問が多い。経済的な負担も大きい。誰も悪くない問題で、無数の人達が泣いている。
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