「妻の他人を見るような眼に耐えきれなかった」と平聖也容疑者(26歳)は“殺人の動機”を語っている。多分、それだけ。されど、それだけ…。近年多くなった家族間での“殺人事件”の多くには、実は“本当の動機”として、この部分にあるのではないか、という気が私にはする。今月27日に平塚市の海岸に太ももから下がない女性の死体が発見された。下肢部分はなかったが顔が判然としているので、すぐ身元は分かって、平楓吹さん(26歳)と判明する。ほぼ前後して、良心の呵責に耐え切れず自ら出頭してきたのが、夫である聖也容疑者だった。事件そのものは比較的単純で、夫が妻の首を絞めて殺害し、その死体処理に困って、下肢部分を切り落とし、それ以外をスーツケースに詰め、脚の部分は袋に詰め、その両方共に平塚海岸に捨てたというものであった。ただなぜ殺したのかという部分、その動機として夫は「他人を見るような…」妻の眼に耐えられなかったからだと供述しているのだ。おそらく、夫のこの供述に“ウソ”はない。だから、余計に奇妙ともいえるし、怖いともいえる。まず「他人を見るような眼」とは一体、どんな眼か。おそらく、それは“愛情のかけらも感じられない眼”であったに違いない。もしかすると“侮蔑的な眼”であったかもしれない。けれども、われわれは別に“侮蔑的な眼”によって殺されることはない。多少、精神的に“傷つくようなこと”は有るかもしれないが、要するにそれだけだ。世の男性達の多くが、“そういう眼”を既に経験済みである。要するに、そういう夫婦関係や家族関係は、今や特別珍しいものではない。おそらく、彼よりも、もっともっとひどい扱いを受けている、或いは“冷たい眼”で観られながら生活している男性たちは、全国に山のように居る。多分、彼はそのことを知らないのだ。そして、元々壊れやすい「ガラスのようなハート」の持ち主なのに違いない。だからこそ、妻を殺害して、その後に脚を切断し、スーツケースに詰めて夜中に運び出し、海岸に捨てたのに、わざわざそのことを警察に自首して告げたのだ。それくらいなら、どうして殺してしまった時、すぐ警察に電話しなかったのか。おそらく、悔しさの中で、首を絞め、殺して、それでも悔しくて、脚を切断し、スーツケースに詰めて海岸まで運んで、死体を遺棄する時点まで、悔しさとプライドと怒りが勝っていたのだろう。けれども、すべてが終わって、独りになって、誰も居なくなって、自分が妻をいかに愛していたか、いかに大切にしていたか、改めて気付いたのであろう。“愛情”と“後悔”の気持が、自らの「罪」の重さを、改めて悟らせたのだ。近年、増えた“家族間での殺人”。その根本的な動機として「他人のような眼」があるということを、初めて口にしたのが平聖也容疑者なのだ。
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