世の中には“なりたい”と思っても、そう簡単にはなれない職業もある。例えば「医師」や「弁護士」がそうだ。これらの仕事は正規の“国家資格”を得られなければ、職業に就くことが出来ない。その“国家資格”は、当然のことながら国家試験に受からなければ得ることが出来ない。その国家試験を受けるには、大学の医学部や法学部で学ばなければならない。このようないくつもの段階を経て「医師免許」や「弁護士資格」は与えられることになる。ところが、近年、ストレートにここまでたどり着く人はまことに少ない。まず、第一に大学受験そのもので足踏みしている者も多い。ようやく入っても、今度は単位が取れずに“留年”してしまうケースが多いのだそうだ。つまり、なかなか卒業できない。医学部の場合は6年なので、ストレートに進んでも年数を要するが、何年も留年してしまうと卒業するだけでも大変で、医師の国家試験になかなか合格できない。同じことは弁護士の方にも言えて、留年などしてしまうと司法試験はなかなか受からない。こうして、通常ならとっくに社会人になっていなければいけない年齢で、学生のまま身動きできなくなっている人たちも多い。ようやく試験が通って、やっとのことで“国家資格”を手に入れても、今は就職が大変である。特に、最近は弁護士の資格を持ちながらも、正規の弁護士事務所では働けないケースが目立ってきた。日本人は欧米人と異なって、何でもすぐ“訴訟に持ち込む”ということはしない。国策で弁護士の数は増やしたが、仕事量そのものが、それほど増える可能性は少ないのだ。ところが、弁護士を目指した学生の中には“奨学金”という名目の借金を背負っている方も多い。逆に、医学部の留年組には、親が開業医で仕方なく受験して医学部に入ったが、勉強についてゆけず進学がストップしてしまっている場合も多い。こちらの方は借金の心配はないが、元々どうしても“医師免許が欲しい”という切迫したものがないだけに卒業に時間が掛かり、いざ医師免許を得ても“研修医”として組織の中で目標を見失ってしまうケースも多い。つまり、どうにか国家資格を得ながらも、それが宙に浮いてしまう医師や弁護士が、今後は大量に出て来るかもしれない。
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