確かに“法律”がある以上、それには従わなければならない。異性との交遊関係で「現行犯逮捕」に踏み切るのはどういう時なのか。今回の場合、26歳の女性は、恋愛相手となった16歳の男子高校生を自宅に泊めていただけなのだが、たとえそれが“双方の合意”であっても「未成年者誘拐の罪」で逮捕されたのである。何しろ、警察が二人の寝床に踏み込んで来たのだ。う~ん、それってありなのか。もちろん、“あり”である。なぜなら学校にも行かなくなって外泊ばかり繰り返している息子を心配した母親が、何度か警察に相談していたからだ。その日も母親から連絡を受けた警察が、現行犯なら「未成年者誘拐」を適用できるとして、二人が愛し合っているところに踏み込んだのだ。おそらく、警察は何度も母親から詰め寄られて、重い腰を上げたに違いない。こうして10歳も年下の高校生を熱愛してしまった女性は逮捕され「俺は自分の意志で泊まったんだよ」と説明しても訊いて貰えなかった高校生は自宅に戻され、一見、落着したかのような事件となってはいるが、果たしてそうなのだろうか。この場合、法律的解釈では“16歳の少年”はまだ“親の保護下”にある。したがって、親の方が「息子が誘拐された」と主張すれば、そちらの主張を優先する。確かに、26歳の女性は“親の許可”を取って、少年を泊めていたわけではない。早い話、双方とも好きになって、一時も離れていたくなくて、半同棲し始めていた…というのが実情だろう。これが男女が逆で、男が26歳、女が16歳高校生というのなら、週刊誌も飛びつくのだが、今回の場合は何かが違う。母親の“息子愛”と、女性の“恋人愛”の綱引きのようで、いまいち本物の“誘拐事件”のような切迫感がない。それでも女性は「未成年者誘拐」の罪を背負うことになる。母親は、26歳の女から愛する息子を奪い取ったのだ。息子の方は、愛する女性を母親によって“犯罪者”に仕立てられてしまった。その困惑や屈辱や記憶を、どう消していけば良いのだろう。もう学校に戻っても“笑いもの”になるだけである。母親は確かに女性から息子を奪ったが、息子の“心”や“カラダ”まで奪えないことに気付くのはこれからなのだ。
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