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今日の迷言・余言・禁言

未来と運命に対するヒントがいっぱい


「名優」は実生活においても「物語」を演じる


わたしがまだ十代後半だった頃、盛んにTVドラマなどに登場していたのが俳優の近藤正臣氏だった。母親がよく彼の出演しているTVドラマに見入っていたのをなつかしく想い出す。彼の語り口調には特徴があって、だから画面を観ていなくても、また彼が出ているんだな、と判った。その名優・近藤正臣氏も当然ながら齢を取り、今は80代を生きている。2024年に妻を亡くし、現在は“一人暮らし”を続けているようだ。釣りを趣味とする彼は、8年前から岐阜県にある郡上八幡という地域が気に入って、妻と二人でその地に移り住み、毎日、釣り糸を垂れる“優雅な晩年”を思い描いていたようだ。ところが、彼の妻があっという間に認知症となり、介護が必要な状態へと進んだ。彼自身も腰痛の悪化による手術などで“優雅な晩年”などではなくなった。介護し続けた妻は2024年に亡くなり、それ以降は郡上八幡で“一人暮らし”を続ける。その一部始終を“密着した番組”が「妻亡きあとに」というNHKのドキュメントだ。実は昨年の3月に放送した番組で、今回、多くの人から望まれ8月29日にBSで“アンコール放送”という形となったようだ。著名だった俳優の“老い”と“孤独”を真正面から扱った番組で、それだけ反響が大きかったに違いない。とてもヘンな言い方をすれば、どんな著名人でも、大富豪でも、権力者でも、齢を取れば老いていく。ただ、多くの著名人は、自らの“醜態”を見せたがらない。自らの晩年の醜態を曝け出していたのはアントニオ猪木氏くらいのものだ。近藤正臣氏は実質的には70年代~80年代にかけて活躍した俳優で、その甘いマスクと情熱的な語り口で、女性ファンが多かったと思われる。ただ途中から“舞台中心”に活躍の場を移したようで、TVドラマなどで観る機会は減った。さらに、その舞台さえも早くから引退し、岐阜の“小京都”とも呼ばれる風光明媚な地域を、のんびり釣り糸を垂れ“余生を過ごす場”と定めていたようだ。彼の予定が狂ったのは、50年以上連れ添った妻が移住して間もなく認知症となったことだった。その後は“介護に明け暮れる日々”となり、とても“優雅な晩年”などではなくなってしまった。けれども、そういう自分自身の“老い”や“変化”までも、或る意味で“役柄として演じている”ような部分が、わたしには感じられる。名優は、最後の最後までドラマチックに果てないと……気が済まないのだ。
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