イタリア北部のリグーリア州を10月21日暴風雨が襲った。川が氾濫し、橋が流され、土砂崩れが各地で起こった。そんな中、就寝中に自宅が土砂崩れに巻き込まれて跡形もなくなった夫妻がいる。けれども命だけは助かったのだ。愛猫であるシンバとモゼが激しく音を立ててサブリナ・ペレグリーニさんを起こしてくれたからだ。間一髪のところで夫妻は自家用車に乗ってその場を離れようとしたが、あっという間に泥の海と化し、身動きが出来なくなった。それでも消防隊が来て命だけは助かった。愛猫のシンバとモゼも無事であった。こうして愛猫は「命の恩人(猫)」となった。一方、ところ変わって我が日本でも、台風19号が宮城県の丸森町を襲った。7年前にそこに移住してきた渡辺すみよさんは現在も避難所暮らしである。自宅に雨水が浸水し、実質的に家は失われてしまったからだ。けれども、命だけは助かった。川の氾濫で一挙に自宅が水浸しとなったが、どういうわけか仏壇の遺影が置かれた棚のところでピタリと水位が止まったのだ。もし、それを超えていれば逃れられなかった。その遺影とは東日本大震災で亡くなった「夫の遺影」だった。あの時、自宅も夫も喪った。なぜか自分だけは命が助かった。同じ宮城県だが、震災の時には亘理町というところに暮らしていた。震災で家も夫も喪ったので、丸森町に移住し、新たな住居を得た。けれども災難は再び魔手を伸ばした。亡き夫は「命の恩人」なのだが、79歳の渡辺すみよさん自身は、どうして連れて行ってくれなかったのか、と悔やんでいる。時々、こういった“不可思議な話”を聴く。「命」と「自宅」では、確かに命が優先される。けれども一瞬にして「自宅」が消えてしまうのは、それはそれで途方に暮れる。しかも「天災」の場合にはどこにも訴えようがない。誰が悪かったわけでも、何が悪かったわけでもない。人には一時的に“すべて”を失って、丸裸になって、それでも“生きていかなければならない”ときがある。そういう時、普段は「運命」など信じていなかった人でも「運命」というものを思い知らされる。神は「沈黙」している。どんなに叫んでも、どんなに呪っても毒づいても、沈黙したままである。
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