“ことわざ”に「人生(人間)いたるところ青山あり」という言葉がある。簡単にいえば「故郷だけが“骨を埋める”ところではない」という風な意味だ。そういう心境に至ったからかどうかは知らないが「大塚家具」で“2015年の御家騒動”から社長を続けていた大塚久美子氏は、昨年12月に社長を辞任した。毎年、赤字が膨らんでいたので、実際には「もう、どうしようもなくなって辞任せざるを得なかった」という形での辞任である。元々、大塚久美子氏は「かぐや姫」とあだ名されるほど、先代の大塚勝久氏に“可愛がられたお嬢さん”である。だから長男を差し置いて「社長」の椅子に座った。だが経営は素人だったから、赤字が拡大して危うくなった。当然、株主からも叩かれ“御家騒動”に発展する。最終的には先代より彼女の方が株主たちを味方につけたのだが、その後も経営は軌道に乗らなかった。一番の問題は、方向性が定まっていないことだった。本来の高級家具路線を外れ、中流家具を目指して挫折し、海外に活路を見出そうとしたり、会議室の企業と手を組んだり、中古家具も扱うようになったりした。その、いずれもが失敗した。私は早くから「“かぐや姫”は“姫家具”を扱うべきである」と、ここにも書いた。独身で高収入を得ている女性たちを相手に商売すべきだった。仮に独身でなくても「お姫様的な美しい家具」を求める人たちはたくさん居る。そういう人たちをターゲットにすれば、高級路線でも“生き残る”ことが出来る。ただ単に“上質の木材を使った高級品”では売れるはずがない。その「大塚家具」であるが、今月30日付で“上場廃止”になることが決まった。完全に“なくなる”のではなく、ヤマダ電機の“完全子会社”という形に変わるので、吸収された形での上場廃止だ。そういう意味では「大塚家具」は、やはり“大塚久美子”あっての企業だったともいえる。もっとも、先代の父親は“小さな別会社”を作って、一応、何とか経営を続けている。さて、大塚久美子氏はこれで「終わった」わけではない。実は、既に「企業コンサルタント」という肩書で活動している。なぜ“失敗の連続”だったのに「企業コンサルタント」なのか理解に苦しむが、日経トップリーダー大学という“経営者セミナー”では、名経営者たちと肩を並べる形で“講師の一人”として名を連ねている。11月9日の講演予定は「変化への対応」について語る予定なのだ。自身の会社は何度も変化させたが、そのたび赤字が膨らんだ。しかも、そのセミナーに出席するには通常会員は145万円を支払わなければならない。つまり、彼女の講演には、名経営者として“それだけの価値”がある、と見込まれたことになる。このように書くと、彼女を“批判”しているように思うかもしれないが、そうではない。人には、それぞれ才能の「質」があるので、或いは“経営そのもの”には失敗したが「しくじり先生」のような形で、彼女が頭角を現すとも限らない。実際、政治家としては大失敗だったが、講演家(?)&タレント(?)としては大成功している杉村太蔵氏のような例もある。もし彼女が、杉村氏のような“憎めない図々しさ”を持っていれば、それも可能なのだが…。
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