海外には時々、面白い事件というのがある。この事件も、面白いといえば面白い。怖いといえば怖い。愚かと言えば愚か。そして事件に関わる被害者も加害者も、みんなが「悪い奴だった」という哀しいお話だ。まず、被害届を警察署に出した女性には“愛人”がいた。彼女は数年にわたって、その愛人男性に対して金を貢いでいた。ここまでは、どの国でもよくある話である。そして、自分で好きになった“愛人”に対して、自分の金を貢ぐのだから、他人がどうこう言う問題でもない。ところが、彼女はだんだん自分が「騙されているだけなのではないか」と感じるようになった。これも良くある話で、別段、不思議でも何でもない。最初は、相手の言う言葉をまともに受けて“金を渡す”のだが、ふと気づくと、逢うごとせびられている。“だまし取られた”と確信した彼女は、復讐を思い立つ。ここまでも、まあよくあることで、特別ではない。問題はその次で「殺してやろう」と思ったのだ。そして、彼女は自分の娘にそれを相談した。娘は一緒になって「そんな奴、殺してやろう」ということになった。さて誰に頼もうか。娘は何んと夫に相談したのだ。すると夫は「自分に任せてくれ」と自信ありげであった。「打ち明けていなかったが、俺は或る情報機関のトップなんだ」そんな話はしていなかったのに…娘は何故か100%夫の言葉を信じた。自分なら、簡単に奴を殺せるし、その後で奴の臓器を取り出し、それを密売して“貢いだ分”を取り戻してやるさ、頼もしげにタバコをくゆらせた。けれども、夫は当然のようにその報酬を要求した。そこで娘は夫に言われたまま日本円86万円の要求を母親に伝えた。母親は、これまで愛人男性に騙され、総計で日本円760万円も貢いでいた。これで復讐が出来る、と思うと高い金額ではないように思えた。“憎い相手”は居なくなり、ちゃんと貢いできたお金まで戻って来る。こうして“殺害を依頼した”のだが、その後、娘婿は母娘から遠ざかるようになった。家を出たまま戻ってこないのだ。思案したあげく、母娘は「警察に届けよう」という結論に至った。二人は警察署を訪れ、自分は娘婿を信じて86万円を渡したが、殺害は実行されず娘婿も消えてしまった、と訴えたのだ。「殺害」という言葉を発した時、刑事の眼の色が変わったことを、母娘は気付いていなかった。結局、娘婿は逮捕されたが、同時に母娘も逮捕された。もちろん、母親の元愛人男性は殺されることなく、次の“獲物”と仲睦まじく居たところが見つかっただけだった。
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