時々アジアで生まれて欧米に渡り、大成功を収める人達がいる。おそらく彼らも、そういう「夢」に賭けてみたのかもしれない。自国で成功したとしても、たかが知れている。そうであれば思い切って時代の先端を行く国で自分の力を試してみたい。「英国」への密入国は、彼らにとって“夢の第一歩”となるはずであった。もちろん、密入国が犯罪であることは誰でも知っている。そのルートを確保してくれる者に“法外なお金”を手渡さなければならないことも知っている。けれども“夢への第一歩”に続く野心の方が勝っていた。こうして彼らは密入国代金としての150万円~420万円を“組織の男”に支払ったのだ。その代りとして“真新しいパスポート”を手渡される。それは中国で発効されているパスポートの“偽造品”だ。したがって本当はベトナム人だが、中国人名のパスポートとなっている。この事件が発覚した時、警察は最初「39名全員が中国人」と発表した。それはパスポートが中国のもの(偽造品)だったからだ。けれども、実際にはベトナム出身者が20名も混じっていた。彼らは冷凍機能付きの大型コンテナに乗り込み、ベルギーのブリュージュ港から英国のバーフリート港へと入り、アイルランドから来た大型トラックに積み込まれてロンドン近郊へと向かっていた。無事、ロンドンまで辿り着けば、密入国に成功して“パスポート所有の中国人”となることが出来る筈であった。けれども、どこでどう間違えたか、或いは故意なのか、途中からコンテナ内は急速に冷凍化されていった。中に居た密入国者たちの誰もが唖然となった。こんな筈はない。どうしよう。もちろん扉は絶対に開かない。大きな声を出す。けれども、大型トラックは無情に走り続ける。運転手に声は届いていないようだった。全身がどんどん冷凍化される。密入国者の一人ファン・マイさんはベトナムに居る母親に向けてメールを送っている。「私が外国に向かった方法は成功しなかった。本当に愛しています。息が出来ない。死にそう」彼女は親戚中から集めた420万円を支払っていた。ベトナムから中国に渡り、そこからフランスに飛んだ。そして英国に渡ったのだが、そこで警察に捕まりフランスへと強制送還されてしまった。それなのに再度、英国に向かおうとして、このコンテナに乗り込んだのだった。神は時々「無言の警告」を発する。そこで留まって置けば、このような事件に巻き込まれなかったのに…と思うことが多い。“幸せな生活”を望むのであれば、神から発せられる「無言の警告」を決して振り切ってはならない。
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