7月2日の午前、その警察副署長は久しぶりの休日で一人買い物をしていた。いくつかのものを購入して清算し、いったん店を出たのだが、何故か彼は再び同じ店に舞い戻った。そうして、またいくつかの日用品を手に取ると今度は清算せず、そのまま店を出ようとした。当然、彼は警備員に取り押さえられた。それが北海道美深町の警察副署長である室田裕二容疑者(57歳)だった。彼は犯行を全面的に認めている。盗もうとしたのは白髪染め、漂白剤、ガラスクリーナーなどで、計7点2625円相当の品である。金額は小さいが、品数が多いので見つかりやすい。多分、小学生でも、そのくらいのことはわかる。しかも、解からないのは、最初きちんと清算して店を出て、そのあと再び舞い戻って、新たに手に取って持ち逃げしようとした点である。これが“白髪染め”だけだったというなら、まだ言い訳が成り立つ。けれども、7点も盗んでいる。明らかに確信犯で、いろいろ生活用品が欲しかった…としか、解釈のしようがない。それともスリルを楽しみたかったのだろうか。もしかしたら、彼はこれまでにも、同じ手口で犯行を重ねていたのかもしれない。田舎町のホームセンターである。それほど店内が広いとも思えず、それほど多くの客が出入りするとも思えない。もし、彼が同じ手口で犯行を重ねていたなら、店側は何となく気付いていて警戒していたのかもしれない。何しろ相手は警察署の副署長なのだ。それにしても、彼はなぜ盗むようになったのだろう。警察官になって36年目の人物である。もしかしたら、年下の署長から怒られてばかりいたのだろうか。それとも、奥さんからの小遣いが少なすぎたのだろうか。人に言えない借金があったのだろうか。赴任先として昨年来た街に馴染めなかったのだろうか。その理由はたぶん、公表されない。当然、もう警察官としての職務には就けない。本来なら、このような犯罪者たちに対して、温情ある言葉をかけて、二度と同じ過ちを起こさせないような役割こそ“田舎町の副署長”であったはずだ。一時期、多かった警察官や刑事のドラマが減った。あまりにも悲しい現実が“人情刑事”を追放したのだろうか。
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