或る程度の年齢になると、人は“挑戦”をしなくなる。失敗した時のリスクが大きいからだ。確かに「もう齢なのだし…」という言い訳が世間的にも通用する。時には、本人が“やる気”でも、周りの方が止めに入ることもある。プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎氏の場合、家族の方が止めても訊かないことを知っているので、暖かく見守る。常に息子がサポートに回っていることも、彼の“無謀な挑戦”が許される一因かもしれない。とにかく、もう86歳なのだ。通常なら、自由に外を歩き回ることさえも容易ではない。彼の場合には、まだまだ挑戦だ。今回は2019年1月2日から出発して南米大陸最高峰とされる山アコンカグアの登頂を目指す。そして登頂後にはスキーで滑降しながら下山する計画だ。確かにプロスキーヤーだけど、何しろ年齢が…と考えてしまうと、こんな計画は立てられない。過去には70歳で、75歳で、80歳で、それぞれ登頂記録を塗り替えてきた。或る意味で彼の記録は、彼の“個人的な記録”というよりも、“人間の限界に挑んでいく記録”という意味で“ギネス”に値する。近年は“くだらない記録”が多くなってしまったギネスだが、本来は“彼のような記録”を褒め称えるものであったはずだ。それにしても、本当に“年齢による衰え”は無いのだろうか。私など、20代の頃の半分くらいまで体力が落ちてしまったような気がする。若い頃は毎日1時間くらい歩いて勤務先まで通勤していた。乗り物に乗るのが面倒だったからだ。私の育った室蘭は、冬場、とてつもなく、強い北風が吹く。コートを着ていても、北風が全身を通り抜けていく。ヒュー、ヒューという音をたてながら、通り過ぎていく。もし、人間の身体に“霊体(幽体)”が重なっているなら、その霊体までも突き抜けていくような北風なのだ。冬場は滑るので、じっとしているとズルズルと後退していく。後ろに進んでいってしまうのだ。それでも、10代や20代の時には、必死で前へと歩を進めた。短い夏が来ると天国に変わった。青々とした緑が匂いたち、透明な景色で出迎えてくれる。あのような光景は電車通勤や車通勤では味わえない。それなのに、何というこの体たらく。「挑戦者」はどこへ行った。
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