ビジネスの話題というのは、興味のない人にとってはナルホドで終わってしまう。だから私も積極的に取り上げることはない。けれども「人間の運命」というものを考えるうえで重要と思ったことは必ず記しておく。今回、取り上げるのはソフトバンクの孫正義社長である。彼が企業家として「巨人」であることは誰もが認めるだろう。特に“株式投資”に関心のある人たちにとって、“孫氏のソフトバンク”は“堀江氏のライブドア”や“村上氏の投資ファンド”が騒がれる以前にもっとも注目を集めた企業だった。ITバブル崩壊直前にはソフトバンク(現在のソフトバンクグループ)の株価はあっという間に19万8000円まで暴騰し、誰もが眼をみはったものだ。ところがITバブル崩壊で、その株価は200分の1以下まで急落した。解かりやすく言えば、現金換算で2000万円だったものが70000円くらいまで叩き売られたのだ。誰もが、ソフトバンクは倒産するのではないかと思った。それまで孫社長を“ITバブルの寵児”として褒め称えていたマスコミは、手のひらを返したように“詐欺師”とか“大ぼら吹き”とか書くようになった。それ以降も借金比率が高く、常に“危ない企業”として綱渡り的な事業を展開してきたのが孫氏であった。その孫氏が、5月9日の決算会見では81%増の2兆3539億円の営業利益を発表した。それは前日に行われた“日本一の営業利益”を誇るトヨタ自動車の2兆4675億円に迫る勢いであった。同時に連結純利益は4期連続1兆円を突破することが確実と自信を見せた。かつて借金にあえぎ、倒産寸前とまで言われた企業は、いつの間にか毎年1兆円以上の純利益を生み出す企業に変っていたのだ。その大きな利益を生み出すもととなっているのは「ビジョンファンド」と呼ばれる“投資事業”だ。そして今の孫氏はこの投資事業に対し「私の情熱の97%」を注いでいると語っている。10兆円とも言われるその資金は、各国の投資家たちから集めたものだ。いくらソフトバンクが“金持ち企業”になったとはいっても、10兆円はひねり出せない。実は昔から、孫氏の優れている点は“投資家集め”なのである。彼はどのような人物にも“その情熱”で口説き落とす秘術を持っている。まだまだ10兆円でも不足らしく「ビジョンファンド2」の設立も宣言した。再び10兆円を集めて来るというのだ。もちろん、自分や自分の企業を応援してくれる“投資家たち”への還元も忘れない。6月27日を基準日として、ソフトバンクグループの株式を分割して、その配当金を実質2倍とする。小さな企業とか、設立間もない勢いある企業が、前年の“81%増益”“株式の2分割”“新たな投資事業”を行うことはそう珍しくない。けれども、ソフトバンクグループのような巨大企業が“81%増・株式分割・新たな投資”は滅多にない。正に“世界に誇れる偉業”なのだ。最近、世界に向けて発信できるニュースの少なくなってしまった日本企業にとって、孫氏の後を追う人物や企業は出て来るのだろうか。
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