エジプトのダハシュールと言えば、ギザのピラミッドで有名なクフ王の父親スネフェル王による「赤いピラミッド」と「屈折ピラミッド」が建てられていることで有名である。そのダハシュールで新たに複数の棺やミイラが発見されている。その場所は第12王朝時代のピラミッドの南方らしいので、おそらく同じ時代のピラミッドが存在していたものと考えられる。60メートルに及ぶ外壁の遺構も発見されている。古代エジプトの石棺や木棺はたくさん発見されているので珍しくもないが、もしかすると「新たなピラミッドの入り口」がその付近にあるかもしれず、そういう意味では今後の発見が待たれる。一般に古代エジプトのピラミッドは「もう発見し尽くされた」と言われているが、実は「ツタンカーメンの王墓」が発見される前にも同じようなことがいわれていた。「ツタンカーメン王墓」を発見したカーター氏は、出資者から「5回も失敗したのだからもうダメだ」と言われたのに「今回で最後にするから頼む」と泣きついて発掘費用を出してもらった。もし、あの時「もうダメですよね」と諦めていたら、ツタンカーメン像は未だ地下に埋もれていたのだ。そういう意味では“お宝探し”というのは大変である。何しろ、金が掛かるのだ。一時期、日本の家具メーカー「ニトリ」が吉村教授に懇願され出資していたが、新たなる発見は期待できそうにないと手を引いた。エジプトも一時期の情勢不安から観光客の足が遠のいている。そこで、ハリド・アナニ考古相は1965年以来50数年ぶりでダハシュールにある「屈折ピラミッド」の“一般公開”を決断した。このピラミッドは途中から角度が変更しているピラミッドなので「屈折ピラミッド」の名称がある。一般的には建設途中から変更したという仮説がまかり通っているが、それはおかしい。なぜなら、このピラミッドには入り口も二つ、通路も二つ、埋葬室も二つで、明らかに「二重ピラミッド」の構造をしているのだ。最初から「二つのピラミッドを一つとして出現させる」という意図のもと取り組んだことは間違いがない。そして、このピラミッドがギザの「大ピラミッド」を建造した息子の父親が“最後に取り組んだピラミッド”であることは注目される。このピラミッドの後、息子クフ王はギザで「もっとも複雑なピラミッド」を建造するのだ。そういうわけで、大変に興味深いピラミッドが「屈折ピラミッド」なのだ。私は同じ地域にある「赤いピラミッド」の方は中に入った。けれども、正直、このピラミッドからは“複雑な構造”や“精緻な設計”を感じなかった。やはり「大ピラミッド」の内部構造は「屈折ピラミッド」にヒントを得て、彼の息子が英知の粋を集め出現させた「最高峰のピラミッド」なのだ。
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