タイが“仏教王国”であることは広く知られている。国民の94%が敬虔な仏教徒だ。けれども若い人たちは、必ずしも「仏陀(ブッダ)」だけが“人類を救う”とは思っていない。“正義の味方”であるウルトラマンだって、わたしたちを救ってくれるではないか、と考える。少なくともタイの若い女子大生はそう考えたのだ。そう考えながら、仏像を見て、次にウルトラマンを見た。その二つの身体は、彼女の中で静かに“一体化”したのだ。「これだ‼」彼女は一心不乱にブッダとウルトラマンの“合体坐像”や“闘いポーズ”を図案化していった。すると彼女の作品は“優れた作品”として地元のショッピングモールで展示されることになった。当然、若い人たちから注目を集めてマスコミが取材する。こうして人目に触れることが多くなった“合体画像”は、宗教団体の“お偉いさん”や政治家の“お偉いさん”の眼にも触れることとなった。敬虔な仏教徒にとって、ブッダとウルトラマンとを結び付けるなど“あってはならない”ことであった。激しい排斥運動が巻き起こる。女子学生はタイの高僧のところに出向き、謝罪しなければならない事態となった。けれども、これに疑問を持つ人達もいた。大昔「芸術は爆発だ」と岡本太郎氏は言った。顔だけウルトラマンだって良いじゃないか。或いは顔だけ仏像だって良いじゃないか。若い人の中では、ごく自然にどちらも“地球を救う”存在だったのだ。決して、仏陀をバカにしたものなどではない。実業家ポンシワンクン氏は彼女の作品を4500バーツ(16000円)で購入、それをネットオークションにかけたのだ。そうすると、その作品は人気を呼び、600万バーツ(213万円)の高値が付いた。こうしてポンシワンクン氏は、そのお金から女子学生に今後の製作費を手渡し、残り大部分は恵まれない人達が通う病院の寄付金へと当てたのだ。こうして、間違いなく女子学生の描いた「ウルトラマン・ブッダ」は空を飛び、危機にある人たちを救ったのだ。そういえば確かに、ウルトラマンの“頭部全体”は“仏陀”の頭部と似ていなくもない。それにしても、もし日本で“仏陀”と“ウルトラマン”の“一体化画像”をショッピングモールに展示したなら、どういう反応が生まれるのだろうか。
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